ピアノのハンマーは形、固さで音色を左右する重要な部品です。
使用によって弦との接触面が潰れたり摩耗したりで、時々整音という作業をしますが、いつまでも良い音で弾くには時にハンマーの交換が必要となります。
今回のピアノは古い上に、以前来ていた調律師さんが毎回ハンマーを「先端だけ水平に」削っていたらしく、形がおかしくフェルトもだいぶ減っていたので交換する事となりました。
現在ついているハンマーの角度などを測定し、基準のハンマー以外は全て取り外します。
またタッチウェイトも一応測定しておきます。
取り外したハンマーアッセンブリからハンマーヘッドと取ります。
本来このぐらい使い込まれている場合はローラー(ナックル)も傷んでいるのでシャンクごと交換、又はローラーの交換も同時にした方がいいのですが、予算等の都合上今回はシャンクは再利用、ローラーもそのままにします。
外したついでにシャンクフレンジのトルクを計測、悪いものはセンターピン交換をしました。
タッチウェイト測定の結果、フリクションが高めだったのでこの辺で改善してくれると良いのですが・・・
続いてハンマーの加工。まずは第一整音とプリシェイブ。
測定した角度、位置で穴あけ。
サイドのテーパー加工。隣のハンマーと接触しない様に斜めに削ります。
テーブルソーを使って加工すれば早いんでしょうが、指が無くなりそうで怖いので鉋で削りました。
後側のテイル(アーク)加工。
この加工は
1、斜めに取り付けるハンマーのテイルをシャンクと直角にする
2、バックチェックと擦れない様な曲面にする
意味があります。
テイル加工前と加工後。テーパー加工の前後は写真撮っていませんでした。
基準に合わせて接着して
最後に基準も交換して終了
といきたいところですがまだ作業があります・・・・・・
続きを書くのが少し遅くなりました。
今回ハンマーが元の長さより3ミリ程短くなっていて、それに合わせて整調していた為、このままピアノに戻すと弦とハンマーがくっついて音が出ない、またはハンマーシャンクが折れるなんて事になります。
そこで整調をやり直すんですが、その前にせっかく分解してるんだからお掃除を・・・
いつもはハンマーアッセンブリとウィッペンアッセンブリがあって、掃除で来ていない部分。
アルミのレールの上にホコリが積もってます。
外してしまえば掃除も簡単です。
(ご覧になっている同業者様。付けたまま掃除するいい方法があれば教えて下さい。)
こちらは外したウィッペン。これも手が届かない部分にホコリが・・・
掃除してついでにアクションセンターのトルクを点検。約20本のセンターピン交換が必要でした。
筬裏のベッディングスクリュー。あんまり差がわからないので載せても意味が無いかも(笑)
名前がちょっと出てきませんが、シフトペダル(左のペダル)を踏んだときにペダル機構の動きをアクション側に伝える部分。革が貼ってありますがボロボロです。
余りがあったので貼り替えておきました。
この他いつも通り、バランス、フロントのキーピンと鍵盤のキーホールを掃除して、鍵盤の調整をしながら組み立てていきます。
今回はタッチが軽くなった方が良いと言うお客様の要望と、予算などの都合により鉛を取り外して重さを調整し直すタッチウェイト調整はしませんでしたが、納品後お客様がタッチウェイトが気に入らない場合を考え、必要な部分の重さも測って記録しておきました。
ここからやっと整調(アクションの調整)です。
既製品の立派な治具を持っていないので、独立してすぐに作った格好の悪いレットオフラックを仮想の弦に見立て整調していきます。
格好は悪いんですが、ぶら下げた定規のお陰でハンマーの間隔などは合わせやすいです。
写真左は整調が済んでいてハンマーの高さが揃っていますが、右側はでこぼこしているのがわかると思います。
整調が済んだらタッチの重さを測るグラムウェイトと言う錘で、鍵盤が下がる重量(ダウンウェイト)と錘が乗っていても鍵盤が戻る上限の重量(アップウェイト)を測ります。
先にも書きましたが、今回は必要なければタッチウェイトの調整はしないという約束でしたので、許容範囲であればそのままにしておきます。
作業を終えて納品を待つアクション。
昨日納品してきましたが、古いピアノ特有の音色が生まれ変わりました。
弦が古いままでもかなり効果ありますね。
ついでにまた別に投稿するつもりですが、最後の写真のアクションが乗っているグランドピアノ、1988年製のヤマハのG3A、現状は
・弦のサビ落とし
・外装磨き
・内部の掃除/キーピン等磨き
・調律
・整調
しています。
このままで良ければ安く出来ますが、どなたか欲しい方いらっしゃいますか?