アップライトピアノ バランスキーピン交換

ピアノの鍵盤はシーソーのようになっているのはご存知だと思います。
その支点となるのがバランスキーピンというピンです。
通常真鍮、ニッケルメッキの真鍮などで出来ています。
磨いているのは何度か投稿しましたが、錆が酷い場合は交換します。
こちらはY社の新しめのアップライトですがかなりの錆です。
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頑張れば錆も落ちて綺麗になる!と言う方もいるでしょうが、ここまで錆びていると細くなったり真円じゃなくなったりしますので交換します。
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一部分だけ錆が酷いですね。おそらく何かしらの錆の原因が付着していたんでしょう。
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いつもは安いパーツサプライヤの共通部品を使いますが、今回は他の状態がとても良かったのでY社純正のパーツを使いました。
引っこ抜いて打ち込むだけの作業ですが、新しいピンを曲げない様な工夫は必要です。
これで手入れを続ければキーピンはツルツルでタッチも滑らか、キーブッシングクロスの消耗も抑える事が出来るはずです。

グランドピアノのダンパーフェルト交換

少し余裕ができたのでブログでも書こうかと一覧を見ていると、前回から2ヶ月も経ってますね・・・
Facebookの方には一部写真を載せたりしていますが、ブログとして文章を書くとなると時間と気持ちのゆとりがなくて更新が遅くなってます。
以前アップライトのダンパークロスの交換では触れませんでしたが、ダンパーの説明を少ししましょう。
ピアノはハンマーが弦を叩いた時に音が出て、後は徐々に弱くなりそのうち消えますが、自然に消えるまで鳴りっぱなしでは音楽になりません。また色んな音が共鳴してとてもうるさいです。
不必要な音を止めるための止音機構がダンパーです。
仕組みとしては弦をフェルトで常時抑えておいて、必要なときだけ弦から離れる様になっています。
グランドピアノの場合は弦の上に乗っているので、お客様から見ると一番目につく部品かもしれません。
フェルトが経年変化で固くなると音の止まりが悪くなり、倍音が残る様になっていたので修理しました。
ダンパーはウッドに赤いライニングフェルトが接着、更にダンパーフェルトが接着されていて、場合によってはライニングフェルトを残してダンパーフェルトのみ交換と言う事もありますが、今回はライニングフェルトも固くなっていて、高い部品でもないためライニングフェルトも交換しました。
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ダンパーを下から見た写真
とりあえず、すべて剥がして接着するだけです。簡単です。
多少コツと言うか、こうしてしまうと大変と言う部分はありますが本当に簡単です。
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剥がしてウッドとワイヤーだけの状態
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ライニングフェルトを接着
・・・毎度の事ですがダンパーフェルト接着後の写真を撮り忘れました。
あとは取付時にワイヤーの曲げ具合を調整して、ちゃんと音が出てちゃんと止音する様にします。

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低音や中音域のダンパーフェルトが弦の間に入る部分は、片方だけ止音不良のままと言う事も多く、

スタッカートで音が切れない時などはこのワイヤーの調整だけで良くなったりします。

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剥がしたフェルトの残骸

ダンパーレバークロスの貼り替え

GPハンマー交換の報告書を作っていると、以前ダンパーレバークロス貼り替えをした時の報告書が出てきたのでこちらもアップします。
アップライトピアノのダンパー(右ペダル)の機構にはスプーンと言う金属部品とその相手方のダンパーレバークロスがあります。
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アップライトピアノのアクションを裏側から。上の白い部分がおなじみのハンマーで、そこから下にダンパーフェルト、ダンパーレバー、ウィッペンが見えます。
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ダンパーレバーとウィッペンのアップ。間に金色のスプーンが見えています。
緑の粉が落ちていますが、ダンパーレバークロスが削れて粉になったものです。
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ダンパーレバーを取り外したところ。
食器のスプーンに似ていますよね。上の平たくなった部分がクロスと当たるんですが、ここが摩擦によってクロスの成分が焼き付き、ザラザラになってヤスリの様にダンパーレバークロスをどんどん削って、最終的には穴があいて食い込み、鍵盤が戻らない/音が出ないという事になります。
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穴のあいた緑のダンパーレバークロス。
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全部まとめて外しても良いかも知れませんが、取付の間隔が狂わないよう1つおきにダンパーレバーを外して
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クロスを剥がし
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この新しいクロスに貼り替えます。
同じ色にしたいところですが、部品屋さんから仕入れると白いクロスでした。
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レバーの幅に裁断して貼っていきます。
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クロスを貼り替えてもスプーンがそのままではまた削ってしまうので、滑らかになるよう磨いておきます。
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作業終了の写真ですが、最初と見た目変わりませんね(笑)

G5Eハンマーヘッド交換

ピアノのハンマーは形、固さで音色を左右する重要な部品です。
使用によって弦との接触面が潰れたり摩耗したりで、時々整音という作業をしますが、いつまでも良い音で弾くには時にハンマーの交換が必要となります。
今回のピアノは古い上に、以前来ていた調律師さんが毎回ハンマーを「先端だけ水平に」削っていたらしく、形がおかしくフェルトもだいぶ減っていたので交換する事となりました。
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現在ついているハンマーの角度などを測定し、基準のハンマー以外は全て取り外します。
またタッチウェイトも一応測定しておきます。
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取り外したハンマーアッセンブリからハンマーヘッドと取ります。
本来このぐらい使い込まれている場合はローラー(ナックル)も傷んでいるのでシャンクごと交換、又はローラーの交換も同時にした方がいいのですが、予算等の都合上今回はシャンクは再利用、ローラーもそのままにします。
外したついでにシャンクフレンジのトルクを計測、悪いものはセンターピン交換をしました。
タッチウェイト測定の結果、フリクションが高めだったのでこの辺で改善してくれると良いのですが・・・
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続いてハンマーの加工。まずは第一整音とプリシェイブ。
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測定した角度、位置で穴あけ。
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サイドのテーパー加工。隣のハンマーと接触しない様に斜めに削ります。
テーブルソーを使って加工すれば早いんでしょうが、指が無くなりそうで怖いので鉋で削りました。
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後側のテイル(アーク)加工。
この加工は
1、斜めに取り付けるハンマーのテイルをシャンクと直角にする
2、バックチェックと擦れない様な曲面にする
意味があります。
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テイル加工前と加工後。テーパー加工の前後は写真撮っていませんでした。
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基準に合わせて接着して
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最後に基準も交換して終了
といきたいところですがまだ作業があります・・・・・・

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アップライトピアノのオーバーホール

オーバーホールと言うと分解、検査、組み立て、調整等を意味するようですが、ピアノの場合弦の張り替えを指す事が多いようです。
今回はハンマーの消耗、硬化に加え、バットフレンジの動きなどもよろしくなかったので、弦とチューニングピンの交換とハンマー一式を交換します。
ネットで検索するとたくさんわかりやすく書いたページがあり、わざわざわかりにくい説明を書いてもしょうがないかと思いますので簡潔に。
まず弦の方
全部で約230あるチューニングピンを徐々に緩め、ある程度のところで弦を取り外します。
チューニングピンもピン板を痛めないようゆっくりと外します。
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写真は外し終わったところです。
アップライトピアノですが、効率を考えて寝かせて作業しています。
一人で作業しているのでここからの写真がありませんが、私の場合ピン板のダメージが少ないと聞いた事があるので、チューニングピンに弦を巻き付けてからピンを打ち込んでます。
続いてハンマー交換の方です。
このピアノは長年色んな調律師さんが調律や修理をしてきた様で、変なところがチラホラ・・・
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ハンマーを部分的に削ってあって長さが揃ってなかったり
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ハンマーの高さが揃ってなかったり
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バットが部分的に新しかったり
おそらくハンマーシャンクが折れて交換する時にバットにシャンクが残って除去出来ないので新しいバットに交換したんでしょうね。
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スティックも多数あります。
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こちらが新しく付けるハンマーバットとシャンク
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こちらは新しいハンマーヘッド
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一旦基準以外のハンマーと
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ウィッペンを全て外してウィッペンは交換しないので掃除、点検、調整します。
こちらもスティックが数カ所ありセンターピンを交換しました。
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ちなみにフレンジのトルクは勘ではなくこういうので計測しています。
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センターピンが飛び出しているものもありました。
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番外編ジャックの汚れとり
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番外編その2ダンパーロッド磨き
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その3スプーン磨き
この辺は修理代頂いてませんが外したついでなのでやっておきました。
あとは新しいハンマーの取付です。
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先にハンマーヘッドにシャンクを植えて(接着して)
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ウィッペンを取り付けたアクションをピアノに戻し
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シャンクの長さや植込み角度等を調整してバットに植えます。
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出来上がりました。(危うく写真撮らずに閉めて帰るところでした)
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またまたついでにネームやペダルなどの真鍮部分も磨いておきました。
ピアノは音が出るだけなら60年以上平気で使えますが、良い音で音楽を奏でると言う観点でいえば十数年〜数十年で弦やハンマーの交換が必要と言われています。
費用はそれなりにかかりますが、お使いのピアノの音色が気に入らないときはご検討下さい。